「場」をつくった「人」と、その人が掲げた「旗」。そして、その旗のもとに集まる人々の様子を取材し、コミュニティの人間模様をお届けするフォト& コラム。
Vol.3 Saturday beach clean by SEVEN BEACH PROJECT
「じゃ、やっちゃいますか」
ひとはた上がったのは、その瞬間だった。
朝の海は白んでいて、かすみがかった空も空気も、まだ少し眠たい青色だった。そんな土曜日の朝8時、ぞろぞろと集まってきたのは、Saturday Beach Cleanのメンバーたち。毎週土曜日に集まっては、七ヶ浜を中心とした様々な浜で清掃活動を行っている。
この日やったのは、菖蒲田浜へ続く階段の砂を降ろす作業。子どもから大人まで、みんなで一生懸命汗を流しながら、スコップで砂をかき出していく。30分くらい経つと、階段はすっかり綺麗になって、作業を終えた参加者たちが、いま砂を降ろした階段に座って談笑を始める。
「誰かにお願いされたわけじゃないけどね、だってほら、砂が溜まっていると危ないでしょ。でも本音を言うと、みんなこのメンバーで集まって話がしたくて来ているんです」と参加者の一人が教えてくれた。
「きっかけは、SEVEN BEACH PROJECT(※1)の代表でSEA SAW(※2)のオーナー、久保田さんが学生たちとやっていたラジオ収録に遊びに行った時。【また帰って来たくなるビーチとは】というお題に対して「汚くて臭いビーチには帰って来たくない」って女子高生が言ったんです。それで、また人が戻ってくるために、定期的に集まってゴミ拾いなど浜を綺麗にする活動をしたらどうか、というアイデアが学生から出て。その後、久保田さんと飲んでいる時に『じゃあ、やっちゃいますか』ってノリと勢いで。いや、でも本当に共感したんです。普段サーフィンをやるんですけど、汚い海で遊びたくないじゃないですか。だから始めたんです」
と語るのは、このSaturday Beach Cleanのリーダー細川慎治さん。
「それじゃあ、これから朝ごはんでも食べに行きますか」
ひとしきり作業を終えた時、太陽はすっかり目を覚まし、海岸線は眩しい青を反射していた。海開きをして間もない7月の海岸には、浮き輪を持った家族連れが集まってくる頃で、ビーチを後にする彼らとすれ違う。
この美しい海と、そこで生まれるたくさんの笑顔。それを陰で支える「SEVEN BEACH PROJECT」と「Saturday beach clean」は、これからも、涼しい顔してビーチを守り続けていく。
※1 SEVEN BEACH PROJECT
「ガレキからビキニへ」をコンセプトに、菖蒲田浜をはじめとした周辺のビーチに人が集まり、笑顔が溢れる浜にするための活動を行うプロジェクト。
※2 SEA SAW
菖蒲田浜の目の前に店を構えるカフェレストラン。地元七ヶ浜や県内産の食材を使ったお料理が楽しめる。目を惹くログハウスの店構えで、外から来た人にも、地元の人にも愛されている。
取材先:Saturday Beach Clean by SEVEN BEACH PROJECT
取材場所:菖蒲田浜(七ヶ浜町)