「場」をつくった「人」と、その人が掲げた「旗」。そして、その旗のもとに集まる人々の様子を取材し、コミュニティの人間模様をお届けするフォト& コラム。
Vol.4 Hostel KIKO
「お前はなんて“KIKO”なやつなんだ!」
ひとはた上がったのは、その瞬間だった。
8月の終わり、月灯りが次第に存在感を増す夕暮れの河原に、笑い声が響いていた。「もうすぐ仙台を離れるメンバーの送別も兼ねて」と、BBQをしていたのは、Hostel KIKOのメンバーを中心としたコミュニティ。
「味付けって、なにでするんだっけ?」
「あ。やべタレ忘れたかも」
「ブルーシートとってくるね〜」
なんて、緩やかなムードで始まったその回は、ローカルな空気に包まれた、グローバルな場になっていった。
KIKOは仙台駅から徒歩15分の荒町商店街に位置するゲストハウス。「GLOBAL MEETS LOCAL」を掲げ、世界中から訪れる旅行客や滞在者が、地元の人たちと交流する場づくりを行っている。
「ローカルとの触れ合いが日本での体験をより良くしてくれるのと同時に、地元の人たちが世界に目を向けるきっかけにもなると思うんです」と話してくれたのは、マネージャーであり、KIKOの発起人の勝水さん。原点は、幼い頃から外国の方と触れ合ってきた経験にあるという。
「僕は北海道の小さな町で生まれ育ったんですけど、父がよく、友達や街に住む外国人を招いてパーティーやイベントを行っていて。やっぱり外国の方と話すと、その国のことが気になるし、そういう一つひとつの繋がりがすごく大切だと思うんです」
この日も、ゲストハウスに滞在するゲストだけでなく、友達の友達、またその友達と、続々と会場に集まってきて火を囲み始めた。地元の人も留学生も、旅行者も。年代も国籍もバラバラなコミュニティが出来上がり、小さな繋がりがいくつも生まれていくのを目の当たりにした。
「KIKOって、北海道時代に身内の間だけで使っていた言葉なんです。“お前は本当にKIKOなやつだな”なんて言いながら、よく笑い合っていました。“まぬけな人”とかって意味合いなんですけど、全然悪口じゃなくて。ホテルのような完璧なサービスでおもてなすよりも、人間くさいコミュニティがあって、誰でも迎え入れられるような場づくりをしていきたいなーって」
送別会と呼ぶには、ずいぶん明るい宴の音は、あたりが暗くなっても聞こえていた。「また会おうね!」と、笑顔で見送るのは、きっとこの繋がりが緩やかに続いていくことを知っているから。
GLOBAL MEETS LOCAL
この「ひとはた」のもとには、人と人との緩やかなつながりを愛する“KIKOな人たち“が集まってくる。
取材先:Hostel KIKO
取材場所:Hostel KIKO